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「………その言葉通りだよ。


フラれてから、気づいたんだ。


俺は華を幸せにできなかったんだなって。


付き合っている間ずっとつらい思いをさせていたのかと思うと、申し訳ない気持ちになった。


……幸せに出来なかった分、華にはそれ以上に幸せになって欲しかったんだ。」





優さんは、ポツリ、ポツリと話し始めた。




これも、演技?



経験済みの私がそう疑ってしまうのも無理はない。




……だけど、目を見ると分かってしまう。



あぁ、今事実を述べているのだと。





「……華が、桜井の事が好きだってこと、すぐに分かった。


付き合ってるって知って、嫌な気持ちになった。


……けど、その反面嬉しい気持ちもあったんだ。


好きな人と両思いなんて、それだけでも幸せだろうと思った。



………でも。いつ別れた?


なんで桜井に別の彼女がいるわけ?

なんで華の隣に桜井がいない?


…ムカつく。


やっと華が幸せになれると思ったのに…!



………だから、襲った。


襲ったら怖くなって別れるだろうと思った。


桜井のことだから、これ以上俺のせいで彼女を傷つけたくないと思うはずだって。きっと手放すだろうと思った。」





チラリと蒼空さんに視線が向いた。


けれどすぐに華さんの方へと向ける。





「別れたら、どうにかしてでもくっつけてやろうと思った。


そのためには華から行動してくれないと無理だと思って。


だから、行動に移す前に華に提案したんだよ。


……断られるなんて思わなかったけど。



………まあでも、


断られたとしても、するつもりだったけどね。」





その瞬間、ギュッと私の腕を掴む手に力がこもった気がした。



その手の主をチラリと見上げれば、蒼空さんは今にでも殴りに行きそうな目をしている。

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