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「………優さん」




声をかければ、恐る恐ると私に目を向けるその人。





「あなたを許すつもりなんてないし、なんなら一発殴らせてほしいくらいだけど……


ただ、幸せになってほしいって気持ちは否定しません。


優さんは優さんなりの優しさで、行動してしまった。


だけど、その優しさは普通じゃない。度が超えてます。



………優さんはきっと、良い人です。


チャラ男さんに絡まれている私を助けてくれたとき、そう感じたから……」




前にも言ったように


その時の優さんは本当に優しい目をしてた。



落ちてくる本から助けてくれたあの時だって……




「優さんと出会ってからそんなに経っていないし、


私も優さんのことをほとんど知らないから俺の何を知ってるんだって、そう思われても仕方がないけど


………そんな優さんが、優しい目をすることは知っています。


だって、この目でしっかり見ましたから!!!」





コレ!っと自分の目に指をさす。



キョトンとした顔で見られているけれど


「私視力いいんで!」っと最後に付け足した。




「だから、きっと元に戻れます。


優しい時の優さんに……」




………最後まで言って、気づいた。





「…………………」




私、何を語っているんだろうと。



最後の決め台詞みたいなものはなんだと。



ただ一言声をかけるつもりが、長々と語ってしまった。



なんだか自分で言っておいて恥ずかしくなってきた…




「い……以上、ですっ」




優さんに何か言われる前にと、

私もその場から走って逃げた。



言い逃げ。


その言葉が今の私には超絶似合ってる。




(語っちゃった…恥ずかしい!!!)




けど全部本当のこと。嘘はついてない。



……なんだかもどかしい気持ちになった。

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