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「じゃあ、お言葉に甘えて」

「どーぞ。」




今朝のように、

その人の傘の中に入れてもらう。




「それにしても凄く降ってるね~」

「降水確率100%だったのに、なんで持ってこなかったの?」

「私が見た天気予報は晴れだったんだもん。家出た時も晴れていたし……」

「本当にそれ今日の天気予報だった?」

「んー…そう言われると、違う日のような気がしてきた」




でもね、今日傘忘れてきて良かった。

こんな優しい人と出会えたんだから。




「あ。そーいえば、名前言ってなかったね!私は"華"って言います!」

「華、ね。了解。綺麗な名前だね」

「っ、」




綺麗な名前。

それは昔からよく言われていた。



だから、言われ慣れているつもりだったのに、




(あれ…なんか顔熱いや……)




この人にソレを言われると、なんだか照れ臭くなって、少し動揺した。




「……あなたは?」

「ユウ。」

「ユウ、ね!覚えた。どんな字で書くの?」

「優しいって書いて、優、だよ」




聞いて、その説明通りだと思った。




「名前、すごく似合いすぎてるね?」

「ほんと?それは初めて言われたなぁ」




本当に初めて言われたのかな。


こんなにも"優"って文字が似合う人、いないと思うんだけど。

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