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そういえば、ここまで運んでくれたんだっけ…




蘇るその記憶。




たくさん人がいるあの教室の中で抱きかかえられた。


今思い返すと、少し恥ずかしい。




『医務室まで運んでくれてありがとう。今から帰るね』




感謝と、帰る連絡を同時に入れた。


その瞬間、すぐに既読がついたソレ。




『俺も帰るから、そこにいて。』

『でも、優まだ講義あるよね?』

『講義よりも、華の方が大事』




ドキッ。



微熱なはずなのに、

なんだか熱が上がった感じ。




少しして、




「ごめん、お待たせ」




ハァ…と息を切らした優がやってきた。


本当にあっという間だった。




「全然待ってないよ」

「熱は?」

「もう大丈夫!」




ソッと額に触れられる。



それだけなのに、なぜか緊張した。




「あるね、熱。なんで嘘つくの」

「だって微熱だし…しんどくないから」

「華。」

「っ、」




「俺には嘘つかないで」




ギュッと手を握られた。



突然のことに驚いてしまうのも無理はない。


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