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優に会えたのは、大学祭が終わりかけの時。



人が減ったその時に、やっと見つけた。



友達と固まって話をしている優の姿。




「優っ…!」




いつもなら、声はかけない。



友達との仲を邪魔しちゃいけないと思って。



だけど、この時は違った。



ずっと探していたから、待てなくて、見つけた瞬間に名前を呼んだ。




振り向いたのは、優と、その友達も。




「あっ、グランプリ取った子じゃん」

「あー本当だ。なになに、優に用?」

「………………」




優は私を見るだけで

何も言わなかった。




「うん、ちょっと。優借りてもいい?」

「いーよー。……てか、本当綺麗な顔してんね?」




優の友達の1人が食い気味に私に近づいてきて

至近距離でジッと見られた。



それにつられて、

もう1人の友達もすぐそばに。




「マジで同期?」

「そう、だけど……」

「めっちゃ大人っぽいね~」




絡まれている私を、

優は見ているだけで



助けようとはしてくれなかった。




……ただ、




「しかも、なんかいい匂いするし」

「っ、」

「髪の毛から?」




1人の男が私の髪の毛に触れようとしたその瞬間に




優は私の手を取って

その男の前から連れ去った。

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