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「やべっ、優怒ったかも」
後ろからそんな声が聞こえた。
(怒ってる…?)
優が?
確かに
私の手を握るその手は少し強い力だった。
無言で歩いていく優に
私はついていくだけで
連れてこられた場所は、いつも講義を受けている教室。
「優っ、私グランプリ取ったよ」
やっと2人っきりになれて、嬉しさのあまりにその事を伝えた。
褒めてくれると思った。
「うん。知ってる」
だけど、想像していたものとは違って
「……ねえ、なんでそんな目をするの?」
その時の優の目は
いつもの優しい目じゃなかった。
とても冷たい目。
そこに光がないような、冷酷な目つきだった。
「なにか、おかしい?」
「うん…いつもと違うから…」
「いつも優しいってわけじゃないんだよ、俺も」
「っ、」
掴まれている手が痛い。
「……怒ってるの?」
「怒ってないよ」
「ウソ、だって手痛い…」
そう言ったのに、
掴む強さを緩める様子はない。