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「まず、この紙に記入お願いします。お名前、電話番号、それから依頼の内容を」




事務所に戻ると、蒼空さんが淡々と話を進めていて、私は割り込むように蒼空さんの隣に座った。




「ちょっと蒼空さん!横取りしないでくださいよ!」

「お前がちゃんと接客しないからだろ」

「しましたよ!」

「あれでちゃんとしてたら、お前ここ失格だな」



「あの~…書けました…」




小声で言いあっていたら、男はオドオドと書き終えた紙を差し出した。




「ありがとうございます。えーと…お名前は”西島さん”ですね」

(この野郎…)




当たり前のように紙を受け取った蒼空さんは、その用紙に目をとおす。私も隣からその用紙に目をとおした。




「どうぞこれ食べてくださいね」




その間、心音さんが西島さんにケーキを渡していた。その男は「…すみません」と頭を軽く下げる。




と。




「「川に…指輪を落とした?」」




何故か蒼空さんとハモってしまったそれ。その紙の最後にそう書かれてた。




「はい…3日前に…」




3日前、子供と一緒に川で遊んでいたところ、気がついた時にはつけていた結婚指輪がなく、川に落としてしまった。とのこと。




「この3日間、仕事終わり毎日探しに来ていたのですが…探しても探しても見つからなくて…」




西島さんは深刻な表情を浮かべていて、その言葉を聞いた私は、




(だからあんな服装だったのか)




と納得した。




「いや…でも、待って下さい。こんな寒い時期に川に入ったんですか?」




蒼空さんが西島さんにそう問うと「子供が行きたいと言うものですから…」と苦笑い。

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