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目の前の本棚に目線をあてていれば




フッ…と少し暗くなった。



それは誰かが後ろにいるから起こる現象で、




「華。」

「っ、」




その声に

身体は正直で

ビクッと反応した。




身体中に緊張が走って


なぜか、息切れのように、呼吸が乱れた。




この時にはすでに、あの日のことがトラウマのように感じていたんだと思う。




振り向かない私に、優は私の肩を掴んで強引に振り向かせた。



優と向き合う体制。



……顔を上げれない。




「なにしてんの?」

「……みんなで、課題を…」




息が乱れて、言葉も震える。



見なくても分かる。


今私に向けられている目は、とても冷たい目だということを。




「男も、いるよね?」

「……………………」




声が出なかった。




あのグループは先生が決めたグループだって。


そう言わなきゃいけないのに、声が出ない。




「華。」

「っ…」




俯く私の顔を、強引に上へと向かせる。




「……俺、嫉妬で狂いそう。」




そんな優が、一瞬寂しい表情をしたかと思えば




「っ、!んっ…や、…!」




荒々しいキスが落ちてきた。




(こんなところで…!)




誰かが来るかもしれない。

見られてしまうかもしれない。



その緊張感と、呼吸さえもさせてくれないようなキス、冷たい目で私を見るその目。




狂ってしまいそうなのは私の方だった。


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