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優と別れてからは

友達と何度か遊びに行った。



この間行けなかったカラオケにも行った。



すごく楽しくて、これからは気にせず行けるんだと思うと嬉しかった。




……嬉しい反面、私の心の中の罪悪感は消えていない。




あれから優とはもちろん会っていない。



大学で遭遇することはあるけれど、

お互い何も喋らず素通りをする。



毎回隣を通るたびに

緊張感が身体中に走るのは

未だに優のことが怖いからだ。



優は一体どんな目で私を見ているのか


勝手に別れを決めた私の事を憎んでいるのかもしれない。



だとしたら、また冷たい目で見られている気がする。



そう思うと

目なんて合わせられなくて

隣を通る時は顔を俯かせて歩いた。














ある日のバイト帰り。



大粒の雨が降り注いでいた。




だけど、この日も入学式の時と同じように、



朝は晴れていたにも関わらず、急に雨が降り始めた。



通り雨だと思って、少し待ったけれど止まない雨。




(近いし、走って帰ろ)




この時のバイト先は家までの距離が歩いて5分程度だった。



走れば2分で着く距離。



カバンを頭の上に持っていって、少しでも濡れないようにと走り出す。




途中信号に引っ掛かり、立ち止まっていれば




「……、…?」




当たっていた雨が、身体に当たらない。




何かに雨が当たる音


それが傘だと知った時




「っ……ゆ、う…」




私の隣に立つその人に、気がついた。



なんで……ここにいるんだろう。




優の家はこの辺じゃ無いはず…


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