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ツラい、と思ったこと



怖いと感じたこと




それは何度も味わった。





………だけど、それよりも、



そんな思いとは別に

優とは沢山の思い出がある。




それはどれも良い思い出で


優と別れてからもずっと、その思い出だけは忘れたことはなかった。




それは、きっと、その時が本当に幸せだと感じていたからだ。




幸せな時間や、楽しかった思い出は


そう簡単に忘れることなんてできないから。







「………っ、ごめん、」







再び、"ごめん"、その言葉。




もう、謝らないで欲しい。



そう思った瞬間








「今だけは…許して、」







立ち上がった優は


私の前に立つと





フワリ、と優しく私を抱きしめた。





「っ…………」





前までなら、

触れられるだけでも強張っていた身体。




だけど、今は、






「ゆ、う……」






身体の力が抜けて、涙が溢れ出る。


それは、安心しているということ。




ギューッ、と


強いようで、とても優しいその力。

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