request
「なに」
っと、振り向いた彼に
「っ…………」
目を合わせると、ギュッと目を閉じた。
遠回しに、キスして欲しいってこと。
(キスしてなんて恥ずかしくて言えない…)
この行動でさえも恥ずかしい。
掴む手が微かに震えるくらい…
「…………………」
今、蒼空さんがどんな顔をしているかなんて、
目を閉じているから見えなくて
「っ、」
頬に手が触れた感覚。
視界が真っ黒で、そこからの情報を取り入れることができていないから、触れられただけなのに身体がピクッと反応する。
「なにされたいわけ?」
その言葉に、閉じていた目をうっすらと開けると
「うっ……」
どこか楽しそうに、意地悪な顔をした蒼空さんがいる。
目が合うと蒼空さんは「ん?」と口角を上げてニヤニヤと笑う。
私が求めているものは何か、きっと気づいているはずなのに
蒼空さんは気づいていないフリをする。
「………、…たい」
「なに、ちゃんと言えよ」
そんな私の顔をクイッと上に向かせられた。
「ほら、言ってみ?」
「っーーー、」
楽しそうに、嬉しそうに、
私にその言葉を言わせたいから。
「キ…ス、したい………」
恥ずかしくて顔を隠したいのに、隠せられないこの状況。
顔から火が出そうだ。