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「私だって、勇気がないわけじゃないんだから…」






その瞬間、ガラッとドアが開いた音。






「ただいまー!!!」





と、心音さんの元気な声が聞こえてくる。



ドアが開く少し前に、キスをしてしまった私達はパッと急ぐようにして離れた。





「お、おかえりなさい!」

(ギリギリだった…!)





たぶん、いや、絶対にバレてはいないと思うけど、





「あら?どうしたの月姫ちゃん顔赤いわよ?」


「っ!」





心音さんに言われる前から、その事には気づいていた。



身体が熱くて、顔も熱い。


自分からしたくせに、結局は自分自身が1番照れている。





「暖房が、暑くって!」





パタパタと顔を仰ぐようにして手を動かす。





「そーなの?じゃあちょっと温度下げるわね~」


「ありがとうございます…」





その隙に、チラッと蒼空さんの方を見れば


蒼空さんも薄らと頬を赤く染めていて、





「っ………」





少し照れているようにも見えるその表情で、口元に手を当てていた。





「(て、照れてる……)」





新鮮なその顔をずっと見ていたくて見つめていれば



それに気づいたらしい蒼空さんは一瞬眉間にシワを寄せると、



顔を隠すようにしてそっぽを向く。





「(………可愛い)」





分かりやすく動揺を見せているから、そんな感情が芽生えてしまった。

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