request







「なっ、なっ…!?」


「キスしたくらいで調子に乗んなよチビ」


「何怒って…!」


「怒ってねーよ」


「ちょっ…!ダメだってばっ…!」





再度、キスされそうになって止めるも





「静かにしないとバレるぞ」


「っ…………」





そう言われると



素直に言う事を聞いてしまう私も


キスをされて目を閉じてしまう私も



きっと、その甘い空気に流されてしまってる。





「あらっ 蒼空、どこ行くの?」


「チラシ配ってくる」





上着を羽織って、チラシを数枚持って下へと降りて行った蒼空さんを心音さんは不思議に思いながら首を傾げていた。





「珍しいわね…蒼空がチラシ配りなんて」





「今日寒いのに」と呟く心音さん。



だって、寒いときのチラシ配りなんて、蒼空さん滅多に行かないから。


滅多にというか、ほぼ行かない。





「ね、月姫ちゃんもおかしいと思わな……」





心音さんは私の顔を見て、何も言わずにピッと部屋の温度を下げた。





「月姫ちゃん、暑かったらちゃんと言ってね?」


「は、い…」





きっと、私の顔が赤くなっているからだ。





(身体が…熱い……)





さっきは頬を赤く染めていて可愛かったのに



今じゃ平然とした顔で行ってしまった。




……やっぱり蒼空さんは私よりも上手だと思う





「あっ、お客さんね」





タイミングよく鳴ったベルに「今日は繁盛してるわね~」と心音さんが席を立つ。



陽葵さんは自分のデスクへと向かい、監視カメラで確認する。





(早く落ち着かせなきゃ…)




みんな仕事モードに入っているも、あんな事をされた私はなかなか落ち着けない。



パタパタと顔を手で仰いで、顔の熱だけでも冷まそうとするけど、そんな事意味ないのは分かってる。



ただ、少しだけでも治ればと思って。

< 428 / 660 >

この作品をシェア

pagetop