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《蒼空side》
数枚しか持ってきていないチラシはあっという間に配り終わり
息を吐けば、白い息が出る。
(さむっ……)
外に出た事を後悔するも、
部屋に戻ればアイツがいる。
アイツの行動には毎度驚かされるばかりで
嫌だと言う割には結局素直に受け入れるし
……歯止めが効かなくなる。
「…………………」
はぁ…と溜め息をつけば
それとともに白い息。
(寒いし帰るか……)
冷えた手をポケットに突っ込んで、事務所へと歩みを進めれば
手に触れる携帯が小刻みに震えた。
それは誰かからの連絡を知らせるもので
冷えた手で携帯を開ければ、連絡相手は"華"の文字。
『ちゃんと話し合えました。ありがとう』
と、一行だけの簡単な文だったけど
事務所にいるアイツにとっては、その文だけで、心から安心するだろうと思った。
連絡まだ?
って、ずっと待ち望んでいた程だから。
詳しくは分からないけれど
昔の関係に戻れたという事だ。
自然と止まった足を再び動かして、少し速めに歩いて行く。
携帯をポケットにしまおうと中に入れれば、クシャッと紙が折れ曲がる音がした。
ポケットの中には携帯以外にも一枚の紙が入っていて
折り畳んだソレは
退職届の紙。
(……ああ、そうだ。早くこれも出さないと)
4年間お世話になったあの場所に