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「これ全部失敗したわけ?」


「かれこれ5回は作り直してる」


「てんこ盛りだな」





テーブルの上に置かれているのは失敗作のカップケーキ達。





「僕はもう食べれません…」





陽葵さんは蒼空さんが帰ってくる間、ずっとその失敗作のカップケーキを食べてくれていたが


すでに限界を迎えたみたいだ。






「陽葵さん無理しないで下さい…!」


「でも…捨てるのも勿体ないですからねぇ…」


「あとは蒼空さんが食べてくれますから!」


「おい」





「何で俺が…」なんて言う割には、もう食べ始めてるし。





「味は不味くねぇーな」


「ほんとですかっ!?」


「ん。だから頑張れ」





蒼空さんのその言葉に、陽菜さんは明るい顔になる。





「はいっ!頑張ります!!!」





そして、再び、6回目のカップケーキ作りがスタートした。





(すごいなぁ……)


あっという間にやる気にさせちゃった…





モグモグとカップケーキを頬張る姿を横目に


蒼空さんが慰める係をした方がいいんじゃないかと思った。




やっぱり、この事務所には蒼空さんが必要不可欠な存在だと思う。





「あー…そうだ。」




「ちょっと」と、私を手招きする彼。





「連絡来たぞ。華から」


「えっ!ほんとに!?」





見せられた携帯の画面には


華さんからのメッセージ。





「良かったぁ……」





ちゃんと話し合えたんだ…


心がホッと落ち着く感じ。





「だから心配しなくても大丈夫だって言っただろ」


「とか言って、蒼空さんもちょっとは心配だったくせに」





分かりやすく反抗すれば





「………まあそうだな」





なんて、素直に受け入れていた。





「やっぱり強がってたんだ?」


「強がってねーよ」


「それを強がりだって言うんです~ イタッ」


「ほら、さっさと手伝ってこい」




シッシッと追っ払うように手を振る蒼空さん。



久しぶりにされたデコピンは、なんだか少し優しかった。


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