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「出来たぁあああ!!!」
6回目でやっと成功したカップケーキ。
陽菜さんはソレを天に掲げるようにして泣いていた。
「良かったわね~!」
「はいっ!」
そのカップケーキを綺麗に包むと
「明日早速渡してきます!」
大事に抱え込んで「ありがとうございましたぁああ!」と叫びながら事務所を出て行った。
「まだバレンタインじゃないのに……」
「待ち切れないのよきっと」
ふふっ、と心音さんは笑う。
「………さて、この失敗作をどうにかしなきゃね」
机の上には大量の失敗作が未だに山積み状態。
「蒼空さんでもこの量は無理だったか」
「ずっと同じ味は普通に飽きるだろ」
だけど、さすが甘い物好きなだけあって
結構減った気がする。
「残りは私が何かにアレンジしようかしら」
「えっ!楽しみ~!!!」
「ふふっ、楽しみにしていてね」
タッパーにそのカップケーキを詰め込む作業を手伝っていれば
「蒼空。」
と、陽葵さんが蒼空さんを呼ぶ。
「紙書けましたか?」
「あー…はい。今あります」
特に気にも留めず、
聞こえてくるその会話を聞き流していた。
…………けど
「心音、月姫さん。ちょっと来て下さい」
呼ばれて、私と心音さんは一瞬目を合わせてから陽葵さんのいるデスクの元へと向かう。
「なになに!また依頼のお礼で何か貰ったとか~?」
少し上機嫌な心音さんに、陽葵さんは優しく微笑むものの、少し寂しそうな表情をする。
………嫌な予感がした。