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一難去ってまた一難
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一難去ってまた一難
その日の帰り道。
蒼空さんが退職するということもあってか、
蒼空さんと心音さんは昔の依頼の話に花が咲いていて
「ああ、そんな事もあったな」と、蒼空さんもなんだか楽しそうだった。
私もその話に参加していたものの
どこか浮かない気持ち。
寂しい…という気持ちの方が大きいと思う。
今月末だと言っていたから、まだ一緒に働ける時間はたくさんある。
だけど、それは、カウントダウン付きで。
(なんでもっと早く教えてくれなかったんだろう…)
私にだけでも、教えて欲しかった。
蒼空さんと一緒に働く日を1日1日大切に過ごせたのに……
「…………………」
そんな私に感づいていたのか
突如、腕をグッと強い力で引かれると
「コイツ送って帰るわ」
心音さんにそう告げていた。
気づけば、いつも私と蒼空さん達が別れる場所まで来ていたらしい。
「了解っ じゃあね月姫ちゃん♪」
「あっ、はい、また……」
ヒラリと手を振る心音さんに、慌てながらも手を振った。
腕を掴む手が緩りと離されると
「…………悪い。」
2人っきりになって
はじめの会話は謝罪の言葉だった。
「……何が?」
何のことで謝ってきているのか、
気づいているけれど
気づいてないフリをする。
「辞めること、黙ってて」
「いいよ別に。気にしてないし」
ああ…なんでこうも、思ってないことを言ってしまうんだろう。
蒼空さんと同じ。私も強がりだ。
「そんなことよりもさ~」
分かりやすく、話を変えようとした。
これ以上この話をすると、もっと寂しさが増す気がして。
「………月姫。」
だけど
名前を呼ばれて驚きつつも、
逸らした目線を再び蒼空さんへと移せば
「っ………」
真剣なその表情は、きっとその話がしたいんだという事に気付かされる。
きっと
私に伝えることが他にあるから。