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せっかくだから、良い物を作りたい。




そう思いながら本屋に来たものの、種類が多すぎて結局どれがいいのか分からなくなってしまった。





(バレンタインって、みんなどんなのあげてるんだろ…)





この年齢にもなると、手作りじゃなくて、市販のお高いチョコを買って渡すべきか…




最寄りの駅に着くも、頭の中はバレンタインのことでいっぱいで、うーん…っと考えながら家へと向かう。




と。





「月姫さん、」





私の名前を呼ぶ声がして





「……あ、湊くん!」





振り向けば、ホウキを片手に私をジッと見つめる湊くんの姿。





「久しぶりだね!」


「はい、お久しぶりです。……大丈夫ですか?」


「え?」


「何度か名前を呼んだんですけど、なかなか気づいてもらえなかったので…」





心配そうに、首を傾げる湊くん。



何度も呼んでくれてたんだ…全然気づかなかった。





「ごめんね、ちょっとボーッとしてて」


「そうですか…」


「あっ、湊くん。髪の毛に何かついてるよ」





そう言って、湊くんの髪の毛に手を伸ばし、とってあげる。





「なんだろ~コレ、木屑かなー…」





ホラ、と見せてあげれば





「っ……………」


「あっ…」





頬を赤らめる湊くんを見て


あの事を思い出してしまった。




私…湊くんに告白的な事を言われたんだっけ…




頬を赤く染める湊くんを見て、それが移ったかのように、私も顔が熱くなる。





(髪の毛触っただけなのに……)





それだけで顔を赤くする湊くんに、これからはむやみに触らないでおこう…っと心に決めた。

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