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「あの人にはお世話になっているからね。

暇さえあればここに来て新作ケーキを見に来てくれたり、試しに作ってくれたりしてくれるんだ。

今日もそれで来てくれたと思うんだけど、まさか今仕事中だったとは知らずに…逆に申し訳ない」


「いえ、あいつが勝手にしたことなんで気にしないで下さい。」





蒼空さんと浅川さんが喋ってるところを横目に、私の隣にいる湊くんはキョトンとした表情を浮かべてる。





「あ、そっか。湊くん知らないよね?

あの人は蒼空さんって言って、私と同じ事務所で働いてる人なの。

あっ!あと私と同じ大学なんだよ!だから湊くんの先輩にもなるね~

まあでも、今年の三月で卒業しちゃうから入れ違いに……」





その途端、言葉が詰まる。





(卒業したら……)





……遠いところに行ってしまう。



今までずっと紛らわしていたその気持ちが、溢れ出てしまった。





「月姫さん……?」





突然黙り込んだ私に、湊くんが心配そうに覗き込む。





「……どうかしましたか?」


「あっ…ごめん、なんでもないよ!」





いけない、いけない…。


また心配かけさせるところだったー…




ニコリ、と笑みを浮かべるも





「………………」




湊くん疑い深くジッと私を見たままで、


目線を逸らそうとはしなかった。





と。





「で、お前はなんでここにいんの」


「え?あ、ケーキ食べさせてもらってて…」





話が終わったらしい蒼空さんがこっちに来ると


湊くんはなんだか緊張しているようで、静かに頭を軽く下げていた。




「蒼空さん、この子湊くんって言うの。

浅川さんの息子さんで、

春から私と同じ大学に通うんだよ!」





そう説明すれば、





「あぁ、そうなんだ」





チラリと湊くんの方に視線を向ける。

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