request
「…………………」
何も言わず、私をジッと見つめる彼。
信号が変わったのと同時に
「青になったよ!」っと。
止まっていた足を再び動かせば、
手を軽く引かれて
昨日と同じ、私の手をとって優しく繋ぐ。
「っ…………」
こんなことされたら…
また泣きそうになるんだってば。
自然と俯く顔。
だけど
もう
くよくよしないって、決めた。
「わ、私っ!考えたの!」
泣くのを我慢して
隣にいる蒼空さんと目を合わせる。
「蒼空さんとの思い出を増やしたい!
いっぱい話したり、出掛けたり…
一緒にいる時間を増やしたいって、思ってる。
……ダメかな?」
私の気持ちを、そのまま伝えた。
時間は止まってくれないんだから
思ったことは、ちゃんと言うべきだと。
「……そうだな。」
その言葉に、もちろん蒼空さんも賛成のようで
「お前のやりたい事、行きたいところ、全部行こうか」
「っ!」
久々に見た、彼の笑顔。
ああ、ずっと見ていたい。
一緒にいる間、私は何回この笑顔を見る事ができるんだろう。
……いっぱい、見ておきたいな。