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「ここで…何してるんですか?」


「み、湊くんこそ…!」





さっきまでパン屋の中にいたのに…!





「僕は買い出しお願いされて、」





湊くんは慌てる私を不思議に思っているらしく、分かりやすく首を傾げてる。




入れ違いか……




って、そんな事よりも。





「は、早くお店帰った方がいいよ!」


「えっ、ちょ、月姫さん?」


「湊くんの事待ってる人がいるかもしれない!!」


「……待ってる人?」





何を言っているんだろう、とそんな顔をする。



そんな彼に、早く早くっ!と急かす私。




少し前に、むやみに触らないでおこう…なんて思っていたくせに、今じゃ彼の背中を押してしまっている。





と。





「月姫さん…浅川くん今いないみたいで……す?」





パン屋に湊くんの姿がないから帰ってきたらしい陽菜さんに、絶妙なタイミングで鉢合わせた。



私達を見た瞬間、陽菜さんは目を丸くさせて





「えっ、え!?あ、あ、浅川くん…!」





浮かない顔が、一瞬にして赤く染まる。





「綾瀬さん…?」





「なんでこんなところに」と、陽菜さんがいる事に驚いているみたいで





「僕に、何か用?」


「っーーーー!」





陽菜さんはギュッ、とカップケーキを握りしめてた。





(が、頑張れ…!)





陽菜さんの緊張が私にまで伝わって


鼓動が激しく鳴る。

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