request








「あー…確かに。蒼空って異常に華の事気にかけてたよね?なんか心配性の親みたいにさ」


「そーそー。もはやデキてると思ってた」





……この話題は、苦手だ。



私自身もどんな反応をすればいいのか分からないし、華さんも困った顔をする。





「蒼空って自分のことあまり話さないからさ、彼女が出来たって風の噂で聞いた時、ちょー驚いたよね~」


「で、実際のところどーなの?

もしかして、俺らの知らないところでこっそり付き合ってたとか?」





話のほとんどが華さんへとふられて


私も華さんを見ることしか出来なくて





「まさか!付き合ってないよ~ 普通の友達!」





華さんはいつも通りニコリと笑う。



それはきっと、嘘の笑顔。



まだ出会ってそんなに経っていないけど、そんな私でもその笑顔が嘘だという事に気づいたのだから





「えー?ほんとに?あっやし~」





もちろん、大学でずっと共にしていた友達も気づいてしまう。





「本当だって!」


「んー、じゃあ、蒼空のこと好きだったり?」




その言葉をかけられた、瞬間




私と華さんの間からヌッと伸びてきた手。



その手が机の上に置いてあるクッキーを掴む。





「あっ、蒼空。遅かったね~」





遠くから聞こえたその声で、振り向かなくても、後ろにいるのが蒼空さんだということを知る。



小さな声で「びっくりしたぁ…」と呟く華さんは、どこか安心した表情をしていて





「余ってんじゃん。全部食べていい?」





この人はたった今チョコを断ってきたくせに、


今じゃ甘いクッキーを口にしている。

< 471 / 660 >

この作品をシェア

pagetop