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「………うん。そう言ってくれると思ってた!」





ニコリ。



その笑顔は、さっきと違って、

嘘の笑顔ではない。





「ありがとう、月姫ちゃんっ!」


「わっ…」





隣にいる華さんに再び抱きつかれて、大人っぽい香りに包み込まれた。



華さんって意外と抱きつき癖があるのかも…



心音さんと同じで。





「じゃあ、私もこれからバイトだから!」





スクっと立ち上がった華さんは、すぐさま帰る準備をする。




そして、再び目が合うと





「月姫ちゃんと話せて良かった。卒業式、良かったら来てね!」





ヒラリと手を振って、行ってしまった。





華さんがいなくなると



ポツン、と1人になる私。





(………蒼空さん、)





近くにいないかな?





キョロキョロと周りを見渡せば



その気持ちがバレていたかのように





「華は?」


「あっ、帰ったよ。バイトだって」


「そ。」





ストンと、さっきまで華さんが座っていた席に蒼空さんが座る。





「なあ、」


「ん?」







「早くチョコ食べたい」





私の顔を覗き込んで


口角を上げてそう言う蒼空さんに


なぜか、息が詰まる。

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