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「お邪魔します」
蒼空さんが私の家に来るのはこれで三回目。
だから
私の家に蒼空さんがいるのはとても新鮮なことで、軽く胸が鳴る。
「適当に座ってていいよ」
今日、元々ここに呼ぶつもりだったから、部屋は昨日のうちに綺麗に片付けた。
あとは、チョコを用意するだけで
冷蔵庫へソレを取りに行く。
(気合い、入れすぎたんだよね…)
作った物は、ガトーショコラ。
結局何を作ろうか迷った末、ケーキ系が1番いいんじゃないかと思って。
だって、心音さんの作ったケーキ、いつも美味しそうに食べているから。
心音さんに比べれば、味は落ちちゃうけど。
「お、ガトーショコラじゃん」
「っ!」
待ちきれなくなったのか
後ろからソレを覗き込むように見られてしまい
「持って行くって言ったのに…」
今更隠すのもおかしいと思って、呆れた声でそう言う。
「お前が作ったわけ?」
「そうだよ」
「へえ、お前もこーゆーの作れるんだ?」
ずっと耳元で話しかけてくるから
静かなこの空間では、
やけにその声が耳に響く。
「っ……、ほら、もう向こう持ってくから…」
耳元で言うのはやめてほしい。
反応したくないのに、反応してしまうから。
蒼空さんの声は誰が聞いても良い声で、自然と身体が熱くなる。