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「ん、なに?」





蒼空さんの驚き気味の声が聞こえる。




ケーキを食べてた蒼空さんに


後ろから抱きついてしまったから。




それは勝手に身体が動いたわけではなくて



自分の本心で。





「ちょっと、抱きつきたくなって、」


「……ああ、そう。」





顔は見えないけど、きっと笑ってる。





抱きつきたいと思ったのは


たった今そう思ったのではなくて、





"蒼空のどこが好き?"





蒼空さんの友達にそう聞かれて



想いを告げたあの時から、蒼空さんに抱きつきたいと思ってた。





美味しそうに食べてくれるところ。


好きな人だって言ってくれるところ。


優しくキスしてくれるところ。





あの時は言えていないけど、


そんなところも好きなんです。





ギュゥ…っと少し強めに力を入れれば



フッ、と鼻で笑う音が聞こえて



お腹に回した腕を剥がされると





「おいで。」





私と向き合うようにして、手を広げる。




その顔はとても優しい顔していて



柔らかい笑みを浮かべる彼に


なんの躊躇いもなく、飛び込んだ。

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