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それからといい


貼り紙を貼るだけじゃダメな気がして、周辺をあちこち探した。




「首元にハートの模様があるダルメシアンを見かけませんでしたか?小柄の子なんですけど…」


聞き込みもした。




だけど、みんなが声を揃えて言うのが



「知らない」

「分からない」

「見かけなかった」


……ばかり。




まあそうだよね。
簡単には見つからないよね…




(ワンコロちゃんどこ行っちゃったんだろう)




はあ…


自然と出た溜め息と共に白い息。



外はもう薄暗くて、徐々に寒くなってきた。





(そろそろ帰ろう、続きは明日かな。)




冷えた手をさすって事務所へと帰れば、





(あ、もう帰ってきてたんだ)




2階から蒼空さんと心音さんの話し声が聞こえるから、ブレスレット探し引き上げたんだと気づく。



まあ、寒いもんね。

川の中なんて余計に寒いし。




トントン、と疲れた身体でゆっくり階段を上ると、ヒヤッと足先に冷たい感覚。




(濡れてる……?)




微かに聞こえていた話し声が徐々に大きくなっていって



ゆっくりとドアを開ければ




「おかえりなさい月姫ちゃんっ」




ニコリと笑顔を見せる心音さんは、

上から下までびしょ濡れだった。

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