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「ど、どどどうしたんですかっ!?」


「奥の方探そうとしたら落ちちゃったのよぉ」




ワシャワシャとタオルで髪の毛を拭く心音さんは、いつもと違ってなんだか男っぽくて




(せ、セクシー…)


色っぽい。



だから階段が濡れていたのか。





「大丈夫ですか…?」




私も落ちたことがあるから、心配になる。


心音さんのそばへと近づけば





「今はちょっとやばいかも!」


心音さんの少し焦ってるような声。

 

心音さんの姿に隠れて見えていなかったけれど





「てめぇ……まじでしばく…」


「きゃー怖い怖いっ!」





半ギレ状態の蒼空さんがいた。



蒼空さんも心音さんと同じように上から下までびしょ濡れで、髪の毛からポタポタと水が滴り落ちていた。





「俺まで巻き込むなオカマぁあ!!」


「だ、だって近くにいたから!」


「近くにいるからって引っ張るやつがいるかボケッ!!」





えー…と、



2人の言い合いを聞く限り


きっと私の時と同じように、2人仲良く川の中へと落ちてしまったのだろう。





「きゃぁあ!!助けて!月姫ちゃん!!!」


「しばく!!!!!」


「ちょ、ちょっと…!落ち着いて!!」




間に入ろうとするも、キレ気味の蒼空さんには聞き耳すら立ててもらえなくて。





「っーーー蒼空っ!!!」




呼び捨てで、大きな声で、そう呼んだ。





ピタリ



分かりやすく動きが止まった彼は、

眉間にシワを寄せながらもジロリと私の顔を見ると




「はぁ……」




静かに溜め息をついて




「……シャワー浴びてくるわ」




落ち着いたような表情を見せた。

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