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「俺、前に言ったよな?
お前といると余裕がなくなるし、歯止めが効かなくなるって」
……そうだった。
そう言われた時、可愛いって蒼空さんから初めて言われて、舞い上がっちゃったんだっけ…
「今もそう。さっきお前が呼び捨てで呼んできた時もそう。……毎度落ち着かせる俺の身にもなれよ。」
その言葉に
(あっ、だから………)
溜め息
ついていたんだって、気づいた。
……心を落ち着かせるために。
「……落ち着かせなくても、いいよ…?」
クイッと服の袖を引っ張れば
蒼空さんは前のめりになって
「私も、蒼空さんと、…そーゆー事がしたいし」
「っ、」
「我慢しなくても、いいのに…」
蒼空さんを見上げた。
「っ……、
だから…そういう所だって……」
弱々しい声。
その顔は、余裕が無さそうな。
いつもは見れないその顔に、キュンッと心の奥で音が鳴る。
再びキスをする雰囲気になって
お互いが求め合っているような
引き付け合うようにして近づくその距離。
もう少しで触れる
その瞬間
「蒼空~?」
ドアの奥から心音さんの声。
帰ってくるのが遅いから、心音さんも心配で降りてきたのだろう。
その声にお互い止まってしまって
「……立てるか?」
「あっ…うん、もう大丈夫」
手を差し伸ばしてくれたから、その手をとって、立ち上がる。
心臓は未だにドキドキとうるさいままだけど
蒼空さんは何事もなかったような顔をしていて
(すぐに切り替えられるのがすごいや……)
私も、顔に出さないようにしないと。
「なんだ?」
ドアを開けると、
「あっ、いたいた!」
ちょっと嬉しそうな顔をする心音さんの手には
「着替え無いでしょう?だからコレ、貸してあげる!」
セーラー服のコスプレが。
「いらねーし、寧ろ燃やしたいわ…」
「なんで!?貸してあげるって言ってるのに!」
「お前ありがた迷惑って言葉知ってる?」
セーラー服を押し付け合う2人を横目に
(今のうちに……)
私はこっそり2階へ戻る。
心音さんにはすぐに見透かされそうな気がして怖いから、気付かれる前に逃げるべきだと思って。
(………身体中が、熱いや)
全身ポカポカとお風呂上がりのように熱くて
胸の鼓動も落ち着きを取り戻さないまま、2階へと駆け上がった。