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今日の仕事も気づけば終わり、その帰り道。



隣にはいつものように蒼空さんがいて、
眠たそうに欠伸をする。



心音さんは用事があるからと違う方向から帰っちゃったし、再び2人っきりになってしまうと




(………その先が知りたい)




あの続きがしたい、なんて。





未だに意識しているのはきっと私だけ。


………欲求不満なのかも。




(ち、違うし、)




自分で思っておきながら否定をする。




欲求不満なんかじゃない。


だって、蒼空さんよくキスしてくれるし…



触れるだけのキスの時もあれば、今日みたいな甘くてとろけるようなキスをしてくれる時もあって


結構スキンシップは多い方だと思う。




だからこそ、




(気になるんだもん………その先が)




チラリと横顔を盗み見ると、彼はその視線には気づいていなくて、ただ前だけを見ていた。



今私がこんな事を思ってるなんて、きっと想像もしていないと思う。




そして




「……蒼空さん、」




今日の夜


誘おうとしている事に関しても。





前を見ていた彼が私に視線を合わせると、落ち着いていた鼓動が動き始めた。




「今日っ……」




言いかけた、





その時。





「ワンッ!!!」


「ひゃっ!!?」




犬の鳴き声が後ろから聞こえて、

身構えていなかったものだから肩が跳ね上がるほどに驚いた。




「びっくりしたー……」




蒼空さんも目を丸くして後ろを振り向く。







私達がそのワンちゃんの存在に気がつくと、






もう一度





「ワンッ」




今度は小さめに吠えた。

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