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「野良犬…?それとも迷子、かな?」





呆然と立って目の前のワンちゃんを見つめる私に反して、



その場にしゃがんだ蒼空さんにワンちゃんはトテトテと近寄ってくると、手に自身の身体を擦り寄せていた。




「首輪ついてるから、迷子だな」




その事を確認すると、

その手で優しく顔を撫でてあげている。




そのワンちゃんはとても嬉しそうにしていて、




「なに、可愛いなお前」




そんな姿を見てか、蒼空さんの顔にも笑顔が浮かぶ。




(なにこのツーショット…写真に収めたい……)




思わず携帯を取り出しそうになった。
危ない危ない。


勝手に撮ったら絶対キレられるし…






「てかさ、こいつ、あの依頼のやつじゃねーの?」


「………えっ、うそ!」





ボーッとしていたからか返事が遅れたけど、



蒼空さんの言う通り、目の前にいるワンちゃんは小柄のダルメシアンで。



依頼の事なんてすっかり忘れていた私は慌ててその子に近寄った。





「ちょっと首元見せてもらってもいい?」





通じるわけがないのに目の前のワンちゃんに向かってそう言うと



ワンちゃんは「ワンッ!」と小さく吠えた。




舌を出して私の手元に来ると、意味が通じているのか顔を上げて首元をよく見せてくれるから




「すげっ、言葉分かんの」




蒼空さんも驚いてた。



私もその事に感動したけれど、




「あー……無い、」




首元にあるべきハートの模様は、なかった。



てことは、別の飼い主さんの子か…


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