request








「私、かけてみるね!」





携帯を取り出して、書かれた数字の通りに打ち込めば



2コールを過ぎた辺りで飼い主さんに繋がった。





「あっ、もしもし…」




相手は女の人で



特に慌てている様子はなく、落ち着いた様子のこの人にワンちゃんのことを説明すれば




「あー、また脱走して迷子になったのね…」


「また…ですか?」


「そうなのよ~ これで何回目かしら」




呆れたような声でそう言っていた。




「ごめんね~ 今忙しくて迎えに行けそうにないの。本当に申し訳ないんだけど、1日だけその子預かってもらえることってできる?」


「えっ、」


「明日には迎えに行けると思うから!じゃあ、お願いね♪」





「あっ!ちょっと……」





ご、強引すぎる……



私が返事するよりも先に電話を切ったのは、この子の飼い主さんの方で、携帯越しにツーツーと音が聞こえる。





「なんか…忙しそうだった」


「らしいな、聞こえたわ。」




「迎えに来れないって」と、ワンちゃんに告げると、少し寂しそうな顔をする。




……本当に意味が通じているのかも。






そんなソラに向かって









「俺んち、来る?」









微笑みながらそう言う彼は、少し嬉しそうだ。



蒼空さんの好きなもの


・甘い物全般
・幼い子供
・犬 ← new!


きっと、そうだと思った。




ソラもなんだか嬉しそうで、
蒼空さんの顔をペロペロと舐め始めちゃって





「わ、たしも……行っていい?」





ダメ元でそういえば





「いいけど」





ソラを抱き抱えている蒼空さんは私に目線を移して小さく頷いた。



意外にもYESの返事が返ってきたものだから、顔に出やすい私はまたしても分かりやすく喜びに満ちた顔をしていたみたいで




「お前、犬みてーだな」




フッと鼻で笑われた。



蒼空さんからすると、嬉しくて尻尾を素早く振る犬のように見えているらしい。



まあ今私がワンちゃんだったとしたら、きっとそんな感じだろうな……



否定はしないけど




「じゃー、今日は犬2匹連れて帰るか」


「い、犬じゃないし…!!」




そう言われちゃうと、いつものように反発してしまうのが私で、


ムキになる私を楽しむように口角を上げるのが、いつもの蒼空さんなのだ。

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