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「蒼空さんって、ワンちゃん飼ってたことあるの?」


「ああ、実家でな。」





だから慣れているんだ。



撫で方とか上手だし、蒼空さんに撫でられるたびにソラは気持ちよさそうな顔をするもの。





「じゃあ、蒼空さんが迷子犬の依頼受けた方が良かったかもね」





何かを作り始めている蒼空さんの背中に向かってそう言えば、





「そーすると、お前が川に入る事になるだろ。また川に落ちられるのも迷惑だしな」


「なっ…!もう落ちないし!!あれはちょっと油断してたっていうか……」


「はいはい。分かった分かった」





私も手伝おうと蒼空さんの隣に立つも、彼の腕を軽く殴ってやった。



子供を宥めるような言い方をしてくるんだもん。



「なんだよ」と睨まれるものの、ベーっと舌を出してやれば





「生意気。」


「イタッ」





いつもようにデコピン。





「ワンッ!」


「ああ、食べ終わった?」





そんな中、ソラはお皿を口に咥えて、もっと欲しい!と言いたげな目で蒼空さんを見つめていて





「ダメ。食べすぎ」


「ワンッ」


「………、…あとちょっとな。」





なんて。ソラに対しては甘めの対応。



……ちょっとソラに嫉妬しちゃう。



喋り方もなんだか優しげだし。






「……デレデレしちゃってさ。」





ボソッと呟いたそれは蒼空さんの耳には届いていないらしく、優しい顔をしてソラを撫でるから





「………………」





私は唇を尖らせて、背を向けた。





(……いいなぁ、ソラ)





私も犬になって蒼空さんに可愛がられたいや。

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