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(これは何作ってるんだろう…)




さっきまで蒼空さんが切っていたほうれん草をジッと見つめて、



蒼空さんは今ソラに夢中だから


代わりに切ってあげようかな、と包丁を手に持つ。




蒼空さんが切っていたサイズと同じサイズずつ切っていれば、





「…………なによ」





背後に人の気配を感じて



この空間には私と蒼空さんと迷子犬のソラしかいないから





「なに拗ねてんの」





それが誰かなんて分かりきっていること。



私を挟むようにしてキッチンに手をつく彼は、覗き込むようにして顔を見てくるし





「べっつに…拗ねてないし」





この距離感に未だにドキドキしてしまう私にも腹が立つし、





「あっ、ちょっと、」





包丁を取り上げられると、



それは奥に置かれてしまって





「甘やかしてやろうか?」




口角を上げて笑みを浮かべる蒼空さんに





(あっ、やばい)





なんて気付いたときにはもう遅くて





「う、ひゃぁっ!」





急に抱き上げられると


高いその高さにギュッと目を閉じた。



ジェットコースターは乗れるくせに、高い所はなぜか怖くて見れない。

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