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疲れてる、なんて一言も言っていないのに…





「……なんで、分かるの?」


「疲れた顔してる」





ああ、また……


顔に出ていたみたいだ。





蒼空さんの言う通り、



貼り紙を貼るためにあちこちを歩き回ったからか、今日はやけに疲れていた。





でも、


私よりも、




あんな冷たい場所で長時間捜索していたんだから、きっと疲れているのは蒼空さんの方なのに





「ご飯出来たら起こしにくるから、それまで寝てろ」





自分のことよりも相手のことを1番に考える、そんな人だから、


私のことを優先して考えてくれる。




大丈夫、疲れてない、私も手伝う。



そう言えば





「ウザい。」





なんて言われてしまい、有り難くベッドを借りて寝る事にした。










(……き、緊張したぁ………)





顔を枕にギューと押し付ける。




今から、するんだと思った…




頭の中に思い浮かんだそれ。



想像しただけでも、火が出るんじゃないかってくらい身体が熱くなって





(緊張してちゃ、ダメなのに…!)





わーー!!!っと心の中で叫ぶ。



バタバタと足をばたつかせると





「おい、なに暴れてんだ」なんて。姿は見えないけれど、リビングで料理をする蒼空さんに注意されてしまった。


どうやらそこまで聞こえていたらしい。





(はぁ…落ち着け…私……)




こーゆーことにも、もう慣れないと…





うつ伏せだった身体を仰向けにする。




天井をボーッと眺めていれば


次第に瞼がおりてきて


自然と欠伸が出た。




奥で料理をする音。


その音でさえも、心地よく感じて





(あー…やばい、寝ちゃいそう……)





布団からは、蒼空さんの匂い。


その香りが私を包み込む。




いつものことながら、


この香りは





…………とても落ち着くんだ。

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