request








「お前なぁ…!起きてたなら起こせよ!!」


「何度も起こしたし!!だけど蒼空さんが起きなかったんじゃんか!!」





余裕を持っていたはずが、気づけば出勤時間の30分前になっていて


私達は朝から猛ダッシュで事務所に向かう羽目に。



まだ時間があるからいいやって甘やかしてしまった私も悪いけど、なかなか起きようとしなかった蒼空さんも悪いし!


なのに逆ギレのような言い方で言ってくるからムカつく…!





「おいっ!走れ!!」


「走ってる!!!」





蒼空さんの家から事務所までの道のりは徒歩20分。走ればギリ間に合う時間だった。




…のに。





「ワンッ!!!!」





突如、蒼空さんの腕の中にいたソラが今までにない大きさで吠えて





「っ!あっ、おい!」





蒼空さんの腕から飛び出ると、近くの茂み一点を見つめて何度も吠えた。





「なんなんだ…!」





遅刻してしまうかもしれない焦りからか、蒼空さんは苛立ちを見せて眉間にシワを寄せている。





「ソラ!今は遊んでる暇ないの!行くよ!」





そう呼び掛けるものの、反応は無し。ただただ茂みに向かってずっと吠えてる。





(急いでるのに……)





そんなソラに対して蒼空さんもその場にしゃがみ込むと





「………そこに、何かいるのか?」


「ワンッ!」


「……………………」





その茂みに手をかけた。




草をかき分けるようにして中を探る蒼空さんと一緒になって覗いていれば、





私達の目に








…………1匹のワンちゃんが。





そのワンちゃんはソラと同じ犬種で、私達の顔をジッと見つめるその子の首元には、







ハートの模様。






「……ワンコロちゃん?」





そう名前を呼べば、少し怯えている様子だったその子が





「ワンッ」





小さくだけど、返事をしたんだ。

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