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「これです…!」
見つかった事を連絡すれば
早速事務所にやって来て、そのブレスレットを見るなり依頼者は満面の笑みを浮かべていた。
川の中に投げた物がなんで地面に埋まってたかというと
陽葵さん曰くどうやら投げた日の次の日から雨が続き川の水が倍増したみたいで、
水が引いた今、巻き上がっていた土が覆い被さり埋まってしまったと考えていいらしい。
流されなかったことが奇跡だと思う。
「良かったですね~!」
「はいっ…!本当にありがとうございました!」
ペコリと私達に頭を下げる。
その場にはもちろん手伝ってくれた湊くんと陽菜さんの姿もあって
「綾瀬さん泣いてんの…?」
「も、貰い泣き……ぐすっ…」
「いや…誰も泣いてないけど」
なぜか号泣する陽菜さんに湊くんはしどろもどろ。
「こういう時はね、ハンカチを渡してあげるのよ」
そんな湊くんにアドバイスをしているのは、見つかったという報告を受けて事務所に戻ってきた心音さんだ。
少し和やかなムードが広がるその場はさておき、
「それにしても……なんで自ら投げたんですか?」
私はその点が1番気になってた。
自ら投げた物をまた探しているなんて、
ちょっと、いや、だいぶおかしくない?
隣に座る蒼空さんから「余計なこと聞くなよ」と視線を感じるけれど、気になるものは気になる。
「これは彼氏から貰った物で…」
呟くように話をし始めた彼女は、とても寂しそうな顔をする。
「大学卒業を機に彼が海外に行っちゃって、遠距離に不安がいっぱいだった私にくれたんです。
これを身につけて待っててほしいって。
五年後に帰ってくるから、その時は結婚しよう。そう約束してくれました。
私達2人なら絶対大丈夫。私もそう信じてたのに……」
浮かない表情を浮かべる彼女に
私と蒼空さんは黙って話を聞いた。
「約束の五年は過ぎてしまって、彼からの連絡も無し。
私から連絡しても繋がらない。
………もう捨てられたんだと思いました。
五年もの間があるのだから、彼にもいろんな出会いがある。きっと私のことなんて忘れてしまってる。
そう思うと悲しい気持ちと共に嫌悪感がもよおして、気づけば貰ったブレスレットを川に投げてました。
私はずっと待ってたのに。
あの言葉を信じて待ってたのに……
もう彼のことは忘れよう。
そう吹っ切れたつもりだけど……」
「………忘れられなかったんですね」
ポツリと呟くようにそう言えば
彼女は少し潤む目でコクリと小さく頷いた。