request
「……あっ。そういえば、写真いっぱい撮ってきてって言ってたよね?食べ物とか景色とか、あとカップルっぽい写真も」
「あー……」
すごく嫌そうな顔。
蒼空さん写真苦手だもんね。
「えいっ」
パシャッと音が鳴る。
それは私が蒼空さんにカメラを向けたから。
一眼レフのそれは晶さんから渡された物。このカメラで撮ってほしいって。
「蒼空さんの嫌そうな顔ゲット~」
「…………………」
「あっ、ちょ、ぎゃー!」
首にかけていたそれを取り上げられてしまい、首元が軽くなる。
「没収。」
「なんで!?私の方が撮るの上手いって絶対に!!」
「なめんなクソガキ」
「あっ」
パシャっともう一回音が鳴り
それは蒼空さんが私にカメラを向けたから。
「はっ、変顔ゲット」
「んなっ!?ダメ!消して!!」
手を伸ばすも全く取れないカメラ。
楽しそうに笑う彼を見ると、
自然と心が和む。
もうすでに楽しいや!
出発の時間になり、
指定席のそこに座れば
(ち、近い…)
電車の座席って意外と距離が近い。
隣を見れば目の前に蒼空さんの綺麗な顔があって、
これ以上に近い距離は何度も経験しているのに、なぜか未だに慣れない。
それはきっと蒼空さんがカッコ良すぎるから。
きっと、というか、確実に。