request
桜が舞う日
request22
桜が舞う日
「わ~!満開っ!!」
今日は蒼空さんが引っ越してしまう2日前。
旅行の帰り道に約束したあの事を、たった今実現中。
「ちょうど見頃だね!」
「あぁ、綺麗だな。この辺でいい?」
「うん!」
河川敷の滑り台のある公園で、私達は今日お花見をしに来ていた。
レジャーシートを敷き、風で飛ばされないようにと持ってきた荷物を素早く置いて
「良い天気だし人も少ないし最高だ~」
敷いたそこにゴロンと寝っ転がる。
あ~ 気持ちいいっ。
「こう見ると空がピンクに見える」
「なに?」
隣で何やら作業をする蒼空さんが振り向いた。
「え?」
「名前、呼ばなかった?」
「呼んでないよ?空がピンクに見えるって言ったの」
私が指差す先は、上。
" 空 "を指差す。
「あー……そう。」
「もしかして、呼ばれたと思っちゃった?」
クスクスと笑いながら起き上がる。
「…うっせぇ」
「蒼空さん頬赤いよ~」
「………………」
可愛い。ちょっと照れてる。
その姿をもう少し眺めたくて、
「そら」
そう言えば、ピクリと反応。
「今のは、蒼空さんのことだよ」
「…………………」
「今日は呼び捨てで呼んじゃおっかな~?」
なんだか意地悪したくなる。
ニヤニヤと笑いながら蒼空さんの顔を眺めた。
頬を薄らと赤く染める彼。
逸らされていた目が合うと、
「…………月姫」
低い声で、
とても愛おしそうに名前を呼ばれては
「あっ……」
私は簡単に顔を赤くさせる。
私に向かって伸びてきた手。
愛おしそうに私を見るその切れ長の目。
自然と目を閉じれば────
「花びらついてる」
「え。」
「なに、期待外れだった?」
「っーー!!!
し、てないし!!期待なんか!!!」
「あっそう。まあ外ではさすがにできねーなあ」
「見られるだろうし。」そういうけど、蒼空さん記憶ないの?外でされた経験結構あるんですけど。
「……バカ。」
………ああ、でも、
やっぱり
蒼空さんには勝てないや。