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「忘れ物してない?」


「してない」


「新居の鍵は持った?」


「持った」


「新幹線のチケットある?」


「ある。てか心配しすぎ。俺を誰だと思ってんの」






2日後の朝。



人気の少ない駅の改札前で会話をする私達。






「短気の蒼空さんかな?」


「確かに短気よね~」


「おい」


「イタタタッ!!ほら短気じゃないの!!」






その駅の改札には私以外にも心音さんと陽葵さんの姿もあって、騒ぐ2人を私と陽葵さんがクスリと笑いながら見つめる。






「こんな場面ももう見納めでしょうか?」


「そんな事ないですよ!空いてる時間は帰ってくるって言ってましたし。ね!蒼空さん!」


「あ?あー、はい。そのつもりです」


「そうですか。その時は是非事務所にも立ち寄って下さいね。いつでも大歓迎ですよ」


「はい。ありがとうございます」


「そうそう!いつでも帰ってきなさいよ!蒼空の居場所こっちには沢山あるんだから!」


「………ふっ、ありがとう」


「ちょっと?笑うところなかったわよ今」


「囚人服で言うからだろ。面白すぎ」


「あら、この服気に入った?そうだと思って蒼空の分も用意しておいたから!はいコレ。あとこれは電車の中で食べれるようにクッキーね」


「おお、サンキューな」


「あ、バカ!囚人服投げないでー!!!」






囚人服が入ってるであろう袋は外に投げ捨てていて、クッキーはしっかり受け取ってた。



まあ囚人服はハロウィンの時くらいだよね…


蒼空さんの囚人服姿見てみたい気もするけど。






「荷物増えたね」






少し前まではトートバッグ1つだった荷物が、今じゃ両手に紙袋を2つほど下げている。



中身は全て甘い物で、それはさっき蒼空さんの大学の友達が持ってきてくれたもの。






「これだけあれば3日はもつわ」


「え。1日に何個食べる気」


「5袋は余裕」


「(食生活が心配だ…)」






まあ蒼空さん料理美味いし、大丈夫か。






「そろそろ電車来るんじゃない?」






心音さんのその言葉に私達は同じタイミングで時計を見た。








………あと10分。

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