request
*****
「忘れ物してない?」
「してない」
「新居の鍵は持った?」
「持った」
「新幹線のチケットある?」
「ある。てか心配しすぎ。俺を誰だと思ってんの」
2日後の朝。
人気の少ない駅の改札前で会話をする私達。
「短気の蒼空さんかな?」
「確かに短気よね~」
「おい」
「イタタタッ!!ほら短気じゃないの!!」
その駅の改札には私以外にも心音さんと陽葵さんの姿もあって、騒ぐ2人を私と陽葵さんがクスリと笑いながら見つめる。
「こんな場面ももう見納めでしょうか?」
「そんな事ないですよ!空いてる時間は帰ってくるって言ってましたし。ね!蒼空さん!」
「あ?あー、はい。そのつもりです」
「そうですか。その時は是非事務所にも立ち寄って下さいね。いつでも大歓迎ですよ」
「はい。ありがとうございます」
「そうそう!いつでも帰ってきなさいよ!蒼空の居場所こっちには沢山あるんだから!」
「………ふっ、ありがとう」
「ちょっと?笑うところなかったわよ今」
「囚人服で言うからだろ。面白すぎ」
「あら、この服気に入った?そうだと思って蒼空の分も用意しておいたから!はいコレ。あとこれは電車の中で食べれるようにクッキーね」
「おお、サンキューな」
「あ、バカ!囚人服投げないでー!!!」
囚人服が入ってるであろう袋は外に投げ捨てていて、クッキーはしっかり受け取ってた。
まあ囚人服はハロウィンの時くらいだよね…
蒼空さんの囚人服姿見てみたい気もするけど。
「荷物増えたね」
少し前まではトートバッグ1つだった荷物が、今じゃ両手に紙袋を2つほど下げている。
中身は全て甘い物で、それはさっき蒼空さんの大学の友達が持ってきてくれたもの。
「これだけあれば3日はもつわ」
「え。1日に何個食べる気」
「5袋は余裕」
「(食生活が心配だ…)」
まあ蒼空さん料理美味いし、大丈夫か。
「そろそろ電車来るんじゃない?」
心音さんのその言葉に私達は同じタイミングで時計を見た。
………あと10分。