request







「じゃあ、そろそろ行ってくるわ」


「私もホームまで行っていい?」


「いいけど」


「じゃあ私も!」





囚人服を着た心音さんもそう言っていたけど、





「その格好ではやめときなさい。」





陽葵さんはニコニコと微笑みながら心音さんの腕を掴む。





「え──…分かったわよぉ」





残念がる心音さん。



そんな中、陽葵さんと目が合えばニコリと微笑んでくれた。




たぶん、2人っきりにしてくれたんだ。





「蒼空、気をつけて行ってらっしゃい。僕は蒼空のこれからをずっと応援していますよ」





陽葵さんは改札を通った蒼空さんにそう告げると、


蒼空さんは深々と頭を下げて






「4年間本当にありがとうございました。
あそこで働けたことを何より光栄に思っています。」






その姿が、私の胸にグッときた。





きっと私だけじゃない。


私も
心音さんも
陽葵さんも


みんながそう感じていると思う。





だって心音さんなんて───……






「お、大人になっだわね"ぇーー!!」





なんて、号泣する始末。



ハロウィンでもないのに囚人服を着ている人が改札前で大号泣しているのだから、なんだかもう笑ってしまう。






「そいつうるさいからもう行きます」


「そうですね…その方がいいかと」


「うわぁぁああん!!ま"だねぇーーぞら"ぁあ!!」


「うるさいですよ、心音」





念の為、陽葵さんたちに一度頭を下げて、スタスタと歩いていく蒼空さんの後ろをついていく私。



隣に並べば

蒼空さんの目が微かに潤んでいるから、






(寂しいんだ)





みんなと離れるのが……



そう気づかされる。

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