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今日の講義を全部終えて、
帰りの電車を待っていた。




携帯を弄っていれば





(…………あっ!)





返信きてる!!



蒼空さんから返信が届いていて、たったそれだけのことなのにニヤけが止まらない。


好きな人からの返信なんて
嬉しくて嬉しくてたまらないよね。






………だけど、


そんな気持ちとは裏腹に






『ごめん。今週会えそうにない』





内容はとても悲しいもの。





(またかぁ……)



まあ、仕方がないよね、
なんだか今すごく忙しそうだしさ。






断られたのはこれが初めてじゃない。



蒼空さんの仕事が始まってから、
ことごとく断られ続けている。






(………大変そうだな)



社会人って、こんなに忙しいんだ。







『おっけー!!体調には気をつけてね』



それと共にお気に入りのスタンプを送信。



緩く微笑むスタンプとは裏腹に、
曇った表情を浮かべる私。






簡単に会えるとは思ってない。



………だけど、どこか期待していた部分もある。



日曜日辺りは会えるんじゃないかなって。





その考えが甘かった。
まだ考えが子供なのだと。



…今まで通りはもう通用しないのだから。






携帯の画面を消して
ポケットにしまう。



はぁ…っと溜め息をつけば、白い息なんてものはもう出ない。




とても暖かい気候。


桜はもう散ってしまいそうで、




たった数日、されど数日。


次に会えるのはいつなんだろう、と。




私ばかりがそう思ってたりしないよね…?






(あー…もう、依存しすぎだって…)





考えることは蒼空さんのことばかり。



そんな私とは正反対に、きっと蒼空さんは仕事のことで頭がいっぱいなんだと思う。




入りたてって、覚えることとか多いもんね。






(………私も何かに熱中できないかな)





だったら、
この気持ちも薄れるんじゃないかって。





寂しい、という感覚がないわけじゃないけど



私には指輪があって

将来を誓った約束だってあるんだから─…

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