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夢を見た。
蒼空さんに飛びつく夢。
会いたくて会いたくてたまらなかった人が
目の前にいるのだから
ギューっと強く抱き締めてた。
夢の中の蒼空さん凄く困った顔をしていたけど、そんなの気にしてられない。
会えなかった分、私を満たして欲しい。
もう離したくないって。
離れたくないって。
なんだか蒼空さん少し細くなった気がしたけど
きっとちゃんとご飯食べれてないんだな~…
「………ん、」
目を覚ますと、
視界は見覚えのある場所で
「あ。やっと起きた」
「え……」
「なにその顔」
だって、千恵がいるんだもん。
「……幻覚?」
「そんなわけないでしょ」
「イッ…冷たっ」
軽く額を叩かれたかと思えば、どうやら冷えピタを貼られたみたい。
「えっと……ここまで運んでくれたの?」
階段で倒れた記憶はある。
確かあの時、誰かに腕を引っ張られて…
「私じゃないよ。今来たところだし」
「えっ。じゃあ誰が?」
ムクっと身体を起こして、傍にいる千恵と向き合う体制に。
「覚えてないの?」
「全然……」
「ふぅん。」
「………なにその顔」
ニヤニヤと愉しげに口角を上げる千恵。
「いや~月姫モテるなぁって思って」
「え?」
「湊くんだよ。月姫をここに運んだの」
「えっ!?」
「私もビックリしちゃった。
大学でたまたま湊くんに会って月姫が体調不良で休んでるってこと伝えたら「家どこか分かりますか?」って。
講義終わってから私も様子見に行こうと思ってたし、一緒に行こうかって言ってたんだけど私ゼミの先生に呼び出されちゃってさ~」
聞けば、後から合流するからと湊くんに家の場所を教えたみたいで
ちょうど湊くんが私の家に辿り着いた時、私が階段で倒れている所を目撃したらしい。
「で、私が来た時にはもう月姫はベッドに運ばれてたというわけ。」
「な、なるほど……でも、肝心の湊くんは?」
「私がここに来たのと同時に帰っちゃったよ?よく分かんないけど、どこか思い詰めたような顔してた」
なんだろう……この嫌な感じは。
(まさか私……)
湊くんに飛びついたりしてないよね?
夢だと思ってたことを現実でもしてないよね?
夢の中では蒼空さんの姿があって
本当に強く抱き締めていたんだけど
夢にしては感触があった気がするし、
それをまさか……湊くんに?
「もしかして、手出しちゃった?」
「…………………」
千恵は愉しげに笑うけど
まっっったく笑えない。
もしあんな事を湊くんにしてしまったのだとしたら、寧ろ申し訳なさでいっぱいだ。