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「っ!おいっ…なんなんだ」
ワシャワシャとまた蒼空さんの頭を撫でた。
なんだか凄く撫でたくなっちゃって。
「蒼空さんも恥ずかしいってゆー感情あるんだね」
「………………」
「あっ、今イラッとしたでしょ?分かりやすいなぁ~」
今日の蒼空さんは、とても愛くるしい。
年上だというのに、今だけ年下のような。
「隠さなくても、恥ずかしいことじゃないんだよ」
するりと蒼空さんの首元からネックレスを外し、指輪を取る。
「ねね!付けてあげる!」
しかめっ面の蒼空さんだけど、ちゃんと左手を出してくれる所も愛くるしい。
スっと薬指にそれをはめれば
もちろんピッタリで
「なんだかこうしてみると、本当に結婚しているみたいだね」
蒼空さんの手の横に、私も左手を掲げた。
並べると、言葉通り、結婚しているんじゃないかって思ってしまうような。
しかめっ面だった蒼空さんの表情は
いつの間にか元の顔に戻っていて
「またちゃんとしたやつ渡すから」
ジッと自分の指に付けられたそれを眺めてる。
きっと蒼空さんが言っていることは婚約指輪のことだと思う。
けれどもう、私は────
「ううん、これでいい。これがいいの!」
他のものなんていらない。
私はもう、これが婚約指輪なんだって思いながら付けているのだから。
「あとは私が大学を卒業するだけだね。3年後にはこうやって一緒に暮らして──」
途端。
「ぅ、わぁっ!?」
蒼空さんに抱きつかれたかと思えば、再びベッドへダイブするように倒れてしまう。
ギュゥウッ、と。
今日1番の力で抱き締められているのだけど
「あ──…早く結婚してぇな…」
「っ──!!!」
蒼空さんに甘えられるのはまだまだ慣れない。
いや、たぶん、一生慣れないと思う。