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「はあっ…」






駅から全力で走る。




袴姿で走っているなんて、周りから見れば気になって仕方が無いと思う。






だけど、何も気にならない。



走って息が荒れていることも

視線を感じていることも

足が疲れてきていることも





全部、気にならない。












「はあっはあっ…」






やっと着いたその場所。





バクバクと心臓が煩いけど、見慣れたそのドアを開けて2階に上がる。






「………あれ」






誰もいない…





いつもなら陽葵さんがデスクにいて「おかえりなさい」と、優しく微笑んでくれるその姿も、キッチンで何かを作っている心音さんもいない。






キョロキョロと見渡してもいないのは確かで、



外に出てみようと再び玄関へと向かう。









靴を履いて、扉を開けようとしたのと同時に







「わっ!!」






私の手が触れる前に扉が開いたものだから、ビクッと肩が跳ね上がる。


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