堕ちて、堕ちて、地獄まで。
「帰り、レモネードでも淹れて待ってるよ」
「ありがと」
お家で人が待ってくれてるって幸せなことだな。
そう思いながら、私は走ってスーパーに向かう。
その途中でのろのろと歩く男子高校生たちの後ろについてしまったため、私は減速する。
「ねむー」
「んなー」
大した会話はしていなさそうだ。ほっとして車道を見ながら追い抜こうとすると、いきなりバイクが曲がってきてこちらに向かってくる。
やばい…っ、
私がぎゅっと目を瞑った瞬間、背中に温かさを感じた。そして少しして、
「ふう、あぶねー」
と頭上で声がした。
その方を見ると、男子高校生が私の頭に手を乗せていた。彼は私を庇ってくれたみたいだ。
「あ、ありがとうございます…」
私のお礼に答えることはなく、男子高校生は喋り出す。
「あのバイク、そのまま行っちまったぜ。運転荒すぎんだろ」
あ、もしかして助けてくれたのってさっき追い越そうとした男子高校生のおひとり…?
「あ、あの…お怪我は、ないですか」
「あー。ないよ?若干腰痛いけど」
「す、すすすすみません、私のせいで…」
「それより、お前。擦り傷あんじゃん」
「あ…」
たしかに少し擦ってしまったのか、足に傷がついていた。でも擦り傷としては大きめなものだけれど、このくらいなら一人で直せ
「直してやるからついてこい」
「…あ、いや、」
「いいからさ。絆創膏ほしいだろ?」
「…はい」
私は絆創膏を常備している女子力が高い女子ではなかったので、そのまま頷く。
「じゃ、ちょっと失礼するよ」