堕ちて、堕ちて、地獄まで。





なんでこんなに…っ、気持ちよく感じちゃうの…?

辛い、悲しい、憎い、申し訳ない。

そんな感情に心を支配されていると、勢いよく部屋のドアが開いた。

「オイ」

そこには…、

愛しい人が、立っていた。

「坂口莉音…」

ぽつりと呟く男子校生は、膝がガクガクと震えている。

「月果に何してくれてんだよ」

虎のように冷たい目で莉音が男子校生に問う。

「すっ、すみません!貴方の女だとは知らず…」

「知ってる知らねえは問題ねえんだよ。お前、今すぐ消え失せろ」

そう言った後、彼は私の方に目を向ける。

荒っぽい口ぶりと目つきが、一瞬でいつもの優しい表情に変わる。

「月果」

と上着を寄越してくれる莉音は、にっと笑った。

「すぐ終わるから目ぇ瞑ってな」

バキッと音が鳴るのと、私が目を瞑るのがほぼ同じタイミングだった。

「終わった。…ごめんな」

その言葉とともに、私は目を開こうとした。ごめんなんて言わないでよ、そんな言葉を呟こうとした。でもそこが限界だったらしく、私の意識はぷつんと途切れた。



< 108 / 185 >

この作品をシェア

pagetop