堕ちて、堕ちて、地獄まで。






「月果ちゃんが悪いんじゃないから。鈴城くんはなんか私に合わないなって気づけたから、それでよかったの」

凛咲ちゃんはそう言ってから私から目を逸らす。その横顔から、本当に彼のことを好きではないことがわかった。無理してるわけじゃないみたいだし、よかった。

「そっか…」

「それで、新しい好きな人ができたんだけど、その人と一回だけシたの。けれどその後連絡がつかなくて…」

「だから凛咲ちゃんは過度に痩せようとしてるの?」

と言うと、凛咲ちゃんの目から涙が溢れ出した。いきなり泣かれてしまってオロオロしていると、凛咲ちゃんが涙を堪えながら話し出す。

「だって私は可愛くない。可愛くない女がどうすれば可愛くなれるの?整形するお金もメイクする技術もないのに?一番最初にやることと言ったら痩せることじゃん」

「…」

私は黙り込んでしまった。凛咲ちゃんはどう考えても細すぎる。栄養失調で死んじゃうのかってくらい。

しかも、凛咲ちゃんは可愛くなってはいる。メイクも頑張っているのもよくわかる。まだ上手いと言われればそうではないけれど、でもそれは多分凛咲ちゃんにこのメイクが合ってないだけなんじゃないかって思う。

ただ、彼女は細すぎなだけだ。どう考えても私には違和感にしか映らないけど、でも初対面の人から見ればきっと可愛いと思うはず。

「…凛咲ちゃんは、努力してるんだね」

その言葉だけ、どうにか絞り出すことができた。

私は莉音に好きになってもらえたのに満足して、綺麗になろうと思っていなかった気がする。そう思うと、自分が恥ずかしくなってきた。

「…だって、月果ちゃんは莉音さんと両想いじゃん。いいな、」

「凛咲ちゃんだってなれるよ!」

私が言うと、凛咲ちゃんは驚いたような表情をした。

そして、歪な笑みを見せた。

このとき、この言葉を言わなきゃよかったと後悔する日が来ることを。

私は知らなかった。






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