堕ちて、堕ちて、地獄まで。
私はその男の手をぱしっとはたいた。その時に、初めてそいつと目が合う。
「あ、水無瀬ちゃんじゃん。さーて、水無瀬ちゃんはこっち来ようか」
「なんで…」
「月果に何をするつもりなの」
帆奈の目が鋭く光る。こういうところを見ると、やっぱり彼女は雷神という立派な暴走族の姫なんだなと改めて思う。
「別に?お姫様は俺がプレイボーイなのに気づいてるでしょ?昨日調べたもんね。女には困ってないし、こんなやつとヤる趣味はないって」
「月果のことを悪く言わないで!」
「別にこれは俺の台詞じゃないけど?」
「それ、どういう…」
帆奈がはっと何かに気づいた表情をする。
お願い、帆奈、何に気づいたのか教えて…?
「月果!だめ、逃げて!」
「え?で、でも…」
「このままじゃ絶対後悔する!」
そう言うと、彼女は私の手を乱暴に取った。でも、その隙にその男が行く手を塞ぐ。
「そうはいかせられないなあ。本当は雷神には手ぇ出したくなかったんだけど。そこまで邪魔するなら雷神にも喧嘩ふっかけるよ?」
「…っ、雷神は関係ない。私の友達の問題なの」
帆奈…。
つくづく、いい友達を持ったなと思う。
「あのさあ、今の白虎がどれくらい強いか分かる?
お前らは喧嘩に拳しか使わねえけど、こっちは刃物とか銃とか鉄パイプとか、なんでも使い放題なんだよ。