堕ちて、堕ちて、地獄まで。
イラっとしたように帆奈に返す風磨。
「そしたら別についてきてもらわなくても…」
「「それはダメ!」」
見事なほどにシンクロしている二人。ポーズまで同じだし。二人とも両手を腰に当てていて、いかにもお母さんっぽいポーズだった。
「何のための俺なんだよ」
「んーと、私の話し相手?」
私と普通に会話ができる男子なんて、莉音を除けば風磨くらいしかいないと思う。別にそれは私が男子を嫌いなんじゃなくて、私が男子と話そうとしないだけ。
「違う!俺は喧嘩が強えんだよ」
「ふーん」
「だから…って、全然興味ないじゃんか」
「…」
尚更申し訳なかった。相手が風磨であろうと、私は他人でしかない。一度会った相手でしかない。なのにここまでしてもらうなんて、本当に情けない。私が…
「ネガティブ思考になんなよ」
驚いたことに、そのループを止めたのは風磨だった。
「俺はただコンビニに行きたいだけ!俺の家の近く、コンビニ全然ないからさ。だから俺はアイスかなんかを買うついでについてきたとか思えばいいじゃん」
降参だ。きっと何を言ったって、風磨は聞いてくれないだろう。ここは素直に下がったほうがいいかもしれない、そう思った。
「…うん。ありがとう」
「ん。それでこそ月果だ!」
その意味は全く分からなかったが、とりあえず空気が和んでよかった。
「ここかー、月果の家」
電車に揺られて10分と少し。駅から徒歩5分。
ここが、莉音の家だ。
「ほー、意外と普通のマンションだな」
「確かに。どこにでもありそう」