堕ちて、堕ちて、地獄まで。
トイレにでも閉じこもろうと考えていると、誰かに腕を掴まれた。
振り向くと、綺麗に揃えられた眉をほんのちょっぴり下げた女が立っていた。
私とは違う世界に生きる女だ、そう思った。
「大丈夫?顔真っ青じゃん」
これから莉音にたっぷり甘やかしてもらえるっていうのに、その人自身に心配されるなんてまっぴらだった。
「大丈夫です」
私は彼女の腕を振り払って、トイレに駆け込んだ。
「う…っ」
いきなりこみ上げてきたので、盛大にトイレに吐き出した。
べちゃべちゃべちゃ、と汚い音が出る。
先程まで食べていたものが、こんなに無惨な姿になっているのが辛かった。
「もう無理だよ…」
ぽろりと呟いた言葉は、誰の耳にも聞こえることなく消えた。